初期の中編
シベリア送りになる前
の時期に創作。
『おかみさん』
(更新:24/11/13)
(※、別のタイトル訳
「家主の妻」「女あるじ」「主婦」)
< 概要 >
中編。間借りしていた家の家主の未亡人が田舎に戻ることになり新しい間借り部屋を探さなくてはならなくなったオルディノフ(大学は卒業したものの職には就かずに間借り部屋で独り学問や執筆を続けている青年)は、その部屋探しの途中、教会で若い女性カチェリーナを連れた老人ムーリンと視線を交わす。▲わけありげなその二人に惹かれた彼は二人の跡を追い、二人の住むアパートの小部屋を間借りすることを決める。彼女(間借りの女あるじとしての「主婦」)の世話を受ける形でそこに住み込んだ彼は二人との交流や出来事が重なるにつれ、二人へ向けての当初の好奇の心は彼女を救い出したいという憐れみの心と老人への敵対心へと変わってゆく。結局、彼は、ムーリンの画策によりその住まいから閉め出されまた別の下宿へと移ることになる▲。夢想家の青年を主人公とした一種の恋愛小説。
その他、別の下宿へと移ることを勧めた旧知のヤロスラフ・イリッチ(その地区の警察署長)も配されている。
[成立時期]
シベリア流刑になる年の二年前の47年10月・12月に「祖国雑誌」に発表。
《所収》
・河出書房版全集
(巻1「主婦」米川正夫訳)
・古典教養文庫版のぶん
(「家主の妻」米川正夫訳・
上妻純一郎編・
23年11月刊・Kindle版)
筑摩版全集
(巻1「おかみさん」)
新潮社版全集
(巻1「家主の妻」千種堅訳)
『弱い心』
(更新:24/11/13)
(※他のタイトル訳
「かよわい心」「弱気」)
< 概要 >
短めの中編。ペテルブルグの役所に勤める下級官吏青年シュムコフが、上司から厚遇を受け、彼女も出来るという幸せな状態の到来に対して、▲身体が不自由な自分には身に余るものだと自責呵責の念にとらわれ役所の仕事にも粗相が多くなり、なんと、しまいにはとうとう発狂してしまう▲。
その他、そうなった彼を手助けする友人アルカージーも配されている。
末部に置かれている、アルカージーがネワ川を見て生じる幻影「ネワの幻」でもこの中編は知られている。
[成立時期]
シベリア流刑になる年の前年の48年2月に「祖国雑誌」に発表。
《所収》
河出書房版全集
(巻2「弱い心」)
福武文庫
『前期短篇集』
(「弱い心」)
筑摩版全集
(巻1「弱気」)
新潮社版全集
(巻2「弱い心」工藤精一郎訳)
『他人の妻とベッドの下の夫』
(更新:24/11/13)
(※、別のタイトル訳
「人妻と寝台の下の夫」等)
< 概要 >
短めの中編。▲妻の浮気を突き止めようとした亭主(寝取られ亭主)と妻に裏切られた妻の愛人たちのひょんなかち合わせとそのやりとり▲を面白おかしく描いている。
[成立時期]
シベリア流刑になる年の前年の48年12月に「祖国雑誌」に発表。
《所収》
河出書房版全集
(巻2「人妻と寝台
の下の夫」)
筑摩版全集
(巻2「他人の妻とベ
ッドの下の夫」)
新潮社版全集
(巻2「他人の妻とベッ
ドの下の夫」小泉猛訳)
講談社文芸文庫
『鰐 ドストエフスキー
ユーモア小説集』
(「他人の妻とベッドの
下の夫」小沼文彦訳)
『小さな英雄』
(更新:24/11/13)
(※他のタイトル訳「小英雄」。
元のタイトルは「初恋」。)
< 概要 >
短めの中編。モスクワ郊外の田園豊かな村里を訪れた少年のわたしが、そこでM夫人(人妻の貴婦人)と知り合い、わたしは彼女に片思いをして恋こがれてしまうが、▲彼女にはじつは夫(M氏)のほかに愛人がいて、わたしはその彼女の秘め事をかいま見て驚き、失望し、やがてM夫人は夫とともにその村を去りモスクワへと戻る▲。
彼女が見守る中、荒馬に飛び乗って走った体験など、大人の世界を知って一つの成長を遂げた自身の少年期の出来事を回想する回想小説という形を取っている。
[成立時期]
ペトラシェフスキー事件に連座して逮捕されてペテロ・パヴロフスク要塞の獄中にいた時(49年の4月〜12月頃)に書かれた小品。セミパラチンスクで服役していた57年6月に、「祖国雑誌」にタイトルは当初の「初恋」から「小さな英雄」に改題して作者名を伏せて、発表されている。
《所収》
河出書房版全集
(巻5「初恋」)
福武文庫
『前期短篇集』
(「初恋」)
筑摩版全集
(巻2「小さな英雄」)
新潮社版全集
(巻2「小英雄」木村浩訳)
中期の中編
復帰後の40歳代前
半の時期に創作。
『いやな話』
(更新:24/11/13)
(※、別のタイトル訳
「いやらしい小噺」
「いまわしい話」等)
< 概要 >
短めの中編。ブラリンスキー(上級官吏の男)が上司の宴会で飲んで酔った帰りに▲プセルドニーモフ(同職場に勤める下級役人)の結婚式に飛び入りで出席してその席上で失態をおかして式が台無しになってしまう▲。
[成立時期]
『死の家の記録』の連載が終わった年の翌年の62年12月に兄ミハイルと共同で編集の雑誌「時代」に発表された。
《所収》
河出書房版全集
(巻5「いやな話」)
筑摩版全集
(巻4「いやな話」)
新潮社版全集
(巻4「いまわしい話」
工藤精一郎訳)
講談社文芸文庫
『鰐 ドストエフスキー
ユーモア小説集』
(「いまわしい話」工
藤精一郎訳)
『鰐』
(更新:24/11/13)
(※他のタイトル訳
「わに」「クロコディール」)
< 概要 >
短めの中編。ユーモア小説・不条理小説・社会風刺小説・シュール小説。店の水槽に入れて見世物にしていた鰐(わに)に▲イワン・マトベーイチ(役人の男)が呑まれてしまう▲騒動の始終を描いている。彼の妻とともに同行していた友人のわたしがこの出来事を語り、当時の様々な時事や社会問題を鰐の腹の中でのイワン・マトベーイチののんきなつぶやきや騒動にからませて示していくという手法を採っている。
[成立時期]
『地下室の手記』を発表した年の翌年の65年3月にドストエフスキーが編集の雑誌「世紀」に発表された。
《所収》
河出書房版全集
(巻5「鰐」)
福武文庫
『前期短篇集』
(「鰐」)
筑摩版全集
(巻5「クロコディール(鰐)」)
新潮社版全集
(巻6「鰐」原卓也訳)
講談社文芸文庫
『鰐 ドストエフスキー
ユーモア小説集』
(「鰐」原卓也訳)
青空文庫
(「鰐」森鴎外訳)
※全文
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