初期の短編
(更新:24/11/17)
シベリア送りになる前
の時期に創作。
『プロハルチン氏』
< 概要 >
長めの短編。徹底的に倹約してペテルブルグの下宿で貧窮生活を送るプロハルチン(中年の独り身の下級官吏)の生活ぶりを描いている。▲病気で亡くなったあとの部屋に残されたものや彼の秘密が末部で明らかにされる▲。
[成立時期]
『貧しき人びと』発表の翌年の46年10月に「祖国雑誌」に発表。
《所収》
河出書房版全集(巻1)
筑摩版全集(巻1)
新潮社版全集
(巻1・小泉猛訳)
『九通の手紙からなる小説』
(※、別のタイトル訳
「九通の手紙から成る長編小説」
「九通の手紙に盛られた小説」)
< 概要 >
やや長めの短編。似通った名前の二人の紳士が、用件があってお互いに会おうとするもいつも行き違いになり、そのことをそのつど伝え合う9通の書簡で成り立っている書簡小説・滑稽小説。
[成立時期]
『貧しき人びと』を完成した半年後の45年11月に一晩で書き上げ、文芸誌「現代人」を引き継いでいた詩人ネクラーソフのもとへ持っていって原稿料を受け取り、夜会で朗読されてルゲーネフから称賛を受けた。文芸誌「現代人」に掲載されたのは一年後の47年1月。
《所収》
河出書房版全集
(巻1「九通の手紙に
盛られた小説」)
筑摩版全集
(巻1「九通の手紙
からなる小説」)
新潮社版全集
(巻1「九通の手紙にもら
れた小説」小泉猛訳)
講談社文芸文庫
『鰐 ドストエフスキー
ユーモア小説集』
(「九通の手紙からな
る小説」小沼文彦訳)
『ポルズンコフ』
< 概要 >
長めの短編。ポルズンコフ(社交界で道化を演じている人物)が過去に地方で役人をしていた時の上司との間の失敗談の語りをわたしが描写するという形を採っている。
[成立時期]
シベリア流刑になる前年の48年2月に「祖国雑誌」に発表。
《所収》
河出書房版全集(巻1)
福武文庫
『前期短篇集』
筑摩版全集(巻1)
新潮社版全集
(巻1・小泉猛訳)
『正直な泥棒』
< 概要 >
やや長めの短編。酒好きで恩人の物をこっそり盗んでは酒代にしていたエメーリヤ・イリッチ(浮浪者の男)のことを描いている。▲彼は死に際して恩人に対してその盗みを正直に白状した▲のだった。以前彼と同居していたアスターフィイ・イワーノヴィチ(裁縫職人の男)が彼のことを語りそれをわたしが聞くという形になっている。
[成立時期]
シベリア流刑になる前年の48年4月に「祖国雑誌」に発表。
《所収》
河出書房版全集(巻2)
筑摩版全集(巻2)
新潮社版全集
(巻2・工藤精一郎訳)
『ヨールカ祭りと結婚式』
(※、別のタイトル訳
「クリスマス・ツリーと結婚式」
「クリスマスと結婚式」等。
「ヨールカ祭りと結婚式」
は中村健之介によるタイトル訳。)
< 概要 >
短編。クリスマスのパーティに招かれて金持ちの商人夫婦の娘に目を付けたユリアン・マスターコビチ(中年の紳士)が▲その娘に付く持参金を胸算用して、その五年後に見事その娘を花嫁にして結婚式を挙げた▲。
[成立時期]
シベリア流刑になる前年の48年9月に「祖国雑誌」に発表。
《所収》
河出書房版全集
(巻2「クリスマスと結婚式」)
福武文庫
『前期短篇集』
筑摩版全集
(巻1「クリスマス・ツ
リーと婚礼」)
新潮社版全集
(巻2「クリスマス・ツリ
ーと結婚式」木村浩訳)
後期の短編
(更新:24/11/17)
「作家の日記」に掲載さ
れた50歳代の時期に創作。
『ボボーク』
< 概要 >
長めの短編。ある日わたし(ある男)は道すがら遠い親戚の者の葬送の列に出くわし、彼らに加わって墓地へ行った。葬儀も終わってわたしが墓地に一人残って墓石の上に横になってうとうとしていると、墓の下の死者たちの声が聞こえてきて順に彼らの交わす会話を聞く。
わたし(ドストエフスキー)が、ある男の手記を掲載し末尾でコメントするという形になっている。
ボボークは、葬列に加わった時点からわたしに幻聴のように聞こえていた意味のない叫び声「ボボーク、ボボーク」のこと。
[成立時期]
73年に雑誌「市民」に掲載。
《所収》
河出書房版全集(巻14)
福武文庫
『後期短篇集』
筑摩版全集(巻12)
ちくま文庫
『作家の日記』巻1
新潮社版全集
(巻17・川端香男里訳)
『百歳の老婆』
< 概要 >
短編。孫の家に行こうとして街の通りを休み休みして進んでいく年老いた老婆(百四歳の老婆)に出会ったことをある婦人から聞いたわたしが、そのあとの老婆のことを想像して物語ったもの。
▲そのあと、老婆は孫の家にたどり着いて床屋をしている孫娘とその夫や子供たちと話しを交わしている最中、身動きが突如止まって息絶えてしまう▲。
[成立時期]
76年3月に「作家の日記」に掲載。
《所収》
河出書房版全集(巻14)
福武文庫
『後期短篇集』
筑摩版全集(巻13)
ちくま文庫
『作家の日記』巻2
新潮社版全集
(巻18・川端香男里訳)
『宣告』
(※、別のタイトル訳「判決」)
< 概要 >
短編。自殺を行おうとするおれ(唯物論者の男)の人間の生に対する考察の言葉を書き並べるという形式をとっている。意識による苦痛と虚しさに満ちた生を私たちに与えた「自然」に対する糾弾が中心になっている。
[成立時期]
76年10月に「作家の日記」に掲載。
※、江川卓氏が福武文庫「後期短篇集」に短編ふうの小品として選んだということで、当ページではこの作品は短編としました。
《所収》
河出書房版全集
(巻1・「宣告」米川正夫訳)
福武文庫
『後期短篇集』
(「宣告」米川正夫訳)
筑摩版全集(巻14)
(「判決」小沼文彦訳)
ちくま文庫
『作家の日記』巻3
(「判決」小沼文彦訳)
新潮社版全集
(巻19・川端香男里訳)
『現代生活から取っ
た暴露小説のプラン』
(※、別のタイトル訳
「現代の生活を槍玉にあ
げた暴露小説のプラン」
「現代の生活に取材
した暴露小説のプラン」)
< 概要 >
短編。最近見られる匿名を用いての悪口・罵詈という手法に注目しているわたし(ドストエフスキー)が、お上に対してある男が匿名で悪口の投書を行う一連の行為をデッサン風に描き、今後の創作にあらためてそれを盛り込んでみたいことを語っている。
[成立時期]
77年5月に「作家の日記」に掲載。
《所収》
河出書房版全集
(巻15・「現代生活から取った暴
露小説のプラン」米川正夫訳)
福武文庫
『後期短篇集』
筑摩版全集
(巻14・「現代の生活を槍
玉にあげた暴露小説の
プラン」小沼文彦訳)
ちくま文庫
『作家の日記』巻4
新潮社版全集
(巻19・「現代の生活に取材
した暴露小説のプラン」川
端香男里訳)
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