『貧しき人々』
(更新:24/11/05)
(別のタイトル訳
「貧しき人びと」「貧しい人々」
「貧しい人たち」。)
概要
中編。処女作にしてデビュー作の佳品。
ペテルブルグを舞台に、中庭を隔てて同じアパート内に住む中年の独り身の下級役人マカール・ジェーヴシキンと身寄りのない貧しい薄幸の少女ワーレンカ(ワルワーラ)との間で取り交わされた往復書簡で構成された往復書簡体小説。
二人は、相手への手紙の中に、日々の身辺の出来事や思い、過去の身の上をつづってゆくが、▲やがて、彼女は結婚相手のブイコフ氏(金持ちの地主)に連れられて遠くの町へと去るのだった▲。
成立時期
工兵局の職を辞した44年に執筆し、翌年の5月に完成したものを読んだ友人が感激して批評家のベリンスキーに渡し、ベリンスキーに才能を認められ、46年1月に「ペテルブルグ文集」に発表された。
所収
新潮文庫
(「貧しき人びと」木村浩訳)
光文社古典新訳文庫
(「貧しき人々」安岡治子訳)
河出書房版全集
(巻1「貧しき人々」)
筑摩版全集
(巻1「貧しい人々」)
新潮社版全集
(巻1「貧しき人びと」木村浩訳)
『分身』
(更新:24/11/05)
(※、別のタイトル訳
「二重人格」)
概要
長めの中編。初期の第二作。舞台は都会ペテルブルグ。勤め先で劣等意識と自己の無能さに悩んでいる主人公ゴリャートキン(下級官吏)の職場の同じ課に、▲ある日、彼と容貌が瓜二つで名前も同じ有能な人物新ゴリャートキンが転勤してきて▲、▲やがて彼に仕事を次々と奪われていった主人公は、彼との出世争いに破れ、精神的にも追いつめられ、ついには精神病院送りとなってしまう▲。
※、作中で示されていること(職場の他の人には新ゴリャートキンは見えていないこと)から、▲新ゴリャートキンはゴリャートキンにとって彼が生み出してしまった幻覚(精神病理学で言う一種のドッペルゲンガー=分身)▲だとみなしてよい。作中ではそのような幻覚(妄想、忌避と願望)と現実がないまぜになっていて、物語が進行している。
成立時期
『貧しき人びと』が認めら発表された年の翌年の46年2月に「祖国雑誌」に発表された。
※、題は、小沼訳が『二重人格』という邦訳を付けている。その他は、『分身』と訳出している。
《所収》
岩波文庫
(小沼文彦訳「二重人格」)
筑摩版全集
(巻1「二重人格」)
河出書房版全集
(巻1「分身」)
新潮社版全集
(巻1・江川卓訳「分身」)
『白夜』
(更新:24/11/05)
(タイトルの読み方は「びゃくや」)
概要
短めの中編。初期の佳品の悲恋小説。ペテルブルグの片隅で空想ばかりにふけり街を徘徊するが知人友人を持たない孤独な私(貧乏な青年の官吏)が、ある日、再会を固く約束した相手がペテルブルグに帰ってきていながら彼女のもとに訪れず運河のそばで人知れず泣いていた若い女性ナースチェンカに出会い、その夜以来、毎夜、白夜のもと二人は同場所で逢って身の上話をし、お互いを慰め合う。▲青年がついに愛を告白し、彼女が目の見えない祖母と二人暮らしの我が家に来てくれと告げたのも束の間、四夜目に、待ちこがれていた愛人がその時になって突如彼らの前に現れ、彼女はそのままその愛人と連れだって去っていくのだった▲。
成立時期
ペトラシェフスキーの会員とともに逮捕された年の前年の48年12月に「祖国雑誌」に発表された。
《所収》
角川文庫
(木村浩訳)
講談社文芸文庫
(井桁貞義訳)
光文社古典新訳文庫
(安岡治子訳)
河出書房版全集
(巻5)
筑摩版全集
(巻5)
新潮社版全集
(巻6・江川卓訳)
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