中期の中編
復帰後の40代後
半の時期に創作。
『賭博者』
(更新:24/11/13)
概要
中編。本国ロシアに住む伯母(=お祖母さん)の死後の遺産相続を見込んでドイツの賭博町に逗留していた将軍の一家の貧窮の生活の援助のために賭博を始めたアレクセイ(将軍一家の子供たちの家庭教師をしていた青年)が、▲賭博で大もうけした日に結ばれたポリーナ(彼が家庭教師をしていた将軍一家の義理の娘)にはねつけられてからは、ブランシュ(将軍に取り入る高級娼婦)と共にギャンブラーとなってフランスの賭博の町々を転々とする。しまいには、賭博で一儲けした金もブランシュに巻き上げられてしまうが、たまたま再会したアストリー(ドイツで将軍やアレクセイと親しくしていたイギリスの実業家)からポリーナが彼のことを案じていることをアレクセイは聞かされ、賭博から抜けきれない自分に向けて新たな出発を誓うのだった▲。
成立時期
『罪と罰』を連載していた時期(65年)に、期限までに一作品を書くことを出版人に約束し速記者を雇ってわずか27日間で書き上げたもの。その若き女性速記者アンナとそのあとに結婚してアンナは生涯の良き伴侶となった。
アレクセイによる手記という形式をとり、賭博癖のあったドストエフスキー自身の賭博体験や愛人スースロワとのヨーロッパ旅行の体験が生かされている。
《所収》
新潮文庫
(原卓也訳)
新潮社版全集
(巻6・原卓也訳)
河出書房版全集
(巻8)
筑摩版全集
(巻5)
光文社古典新訳文庫
亀山郁夫訳
『永遠の夫』
(更新:24/11/13)
(※、別のタイト
訳「永遠の良人」
「永遠の亭主」)
概要
中編。自分の妻を9年前に寝取られたことを知った中年男トルソツキーが、妻の死後、▲その娘(彼の妻とヴェリチャニーノフとの間にできた子)を連れて、その妻を寝取った相手である高等遊民ヴェリチャニ―ノフの住むペテルブルグを訪れ、彼と近づきになり、彼に復讐しようとする(一方で彼は相手との友情や和解も同時に求めている)▲物語。
題名の「永遠の夫」は、万年寝取られ亭主の意(い)。
成立時期
70年1月・2月(『白痴』を完成した年の翌年。『悪霊』の連載を始めた年の前年。欧州滞在中。)に「朝やけ」に発表。
《所収》
新潮文庫
(千種堅訳)
新潮社版全集
(巻8・千種堅訳)
河出書房版全集
(巻10)
筑摩版全集
(巻5)
『おとなしい女』
(更新:24/11/13)
(※、別のタイト
ル訳「やさしい女」
「柔和な女」)
概要
短めの中編。聖像を抱いてアパートから投身自殺をしてしまった▲16歳の妻の安置された亡骸を前にして、彼女との出会いと彼女の自殺に至るまでの夫婦生活のありようを、彼女の自殺の原因を探りつつ、質屋をしている中年の夫わたしが回想していく▲という形式の心理小説・家庭小説(夫婦小説)。
わたしが語っていく独白小説になっている。
成立時期
76年11月に「作家の日記」に掲載。
《所収》
河出書房版全集
(巻15「おとなしい女」)
福武文庫
『後期短篇集』
(「おとなしい女」)
筑摩版全集
(巻14「柔和な女」)
ちくま文庫
『作家の日記』巻3
(「柔和な女」)
新潮社版全集
(巻18「やさしい女」
川端香男里訳)
講談社文芸文庫
『やさしい女 白夜』
(井桁貞義訳)
後期の短編
「作家の日記」に掲載さ
れた50歳代の時期に創作。
『おかしな人間の夢』
(更新:24/11/13)
(※他のタイトル訳「お
かしな男の夢」)
概要
長めの短編。ユニークなSF的ユートピア小説。自殺を決意していた青年おれが、▲自殺の前に、うっかり、部屋でうとうとと寝入ってしまい、夢の中で自殺して果て埋葬された彼は、空と宇宙を翔けて、地球とそっくりの惑星にたどりつき、その地でアダムとイブの時代よりも前の社会と言うべき幸せな楽園生活を過ごしている住人たちの精神や生活に感動して一緒に過ごすうちに、彼は彼らに悪(あ)しき知恵や感情をもたらして彼らの社会を堕落させてしまう。目を覚まし、夢だったことに気付いた彼は、その夢での経験をもとに、自殺をやめ、新たな信念と生き方を自分に誓うのだった▲。
おれが語っていく独白小説になっている。
成立時期
77年4月に「作家の日記」に掲載。
《所収》
河出書房版全集
(巻15「作家の日記(下)」・
米川正夫訳「おか
しな人間の夢」)
福武文庫
『後期短篇集』
(「おかしな人間の夢」)
筑摩版全集
(巻13「作家の日記(2)」・
小沼文彦訳おか
しな男の夢」)
ちくま文庫
『作家の日記』巻2
(「おかしな男の夢」)
新潮社版全集
(巻18「作家の日記(2))・
川端香男里訳「おか
しな人間の夢」)
光文社古典新訳文庫
『白夜/おかしな人間の夢』
(安岡治子訳)
論創社刊
『おかしな人間の夢』
(太田正一訳)
アルトアーツ刊
『可笑しな人間の夢/ボボーク』
(西周成訳)
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