『作家の日記』について
(更新:24/11/17)
概要
氏が編集長を任された当時の保守派週刊誌「市民」や、自ら編集の月刊個人雑誌「作家の日記」に発表した氏の社会評論、政治評論、文芸評論・芸術評論、回想記、短編小説などを『作家の日記』という書名にしてまとめたもの。
ジャーナリストとしての氏の言論活動とその主張や見解などを知ることが出来る。「作家の日記」は、当時、人気があり、広く読者を得た。
※、日々の氏の生活の記録を記した氏個人の、いわゆる、「日記」の類(たぐい)ではない。氏は、雑記帳(メモ・ノート)は残しているが、生涯、日記なるものはほとんど書かなかった。
発行の時期
週刊誌「市民」においては、
『悪霊』が中断を経て連載された時期の、
・1873年
に、16回にわたって掲載された。
月刊雑誌「作家の日記」においては、
『未成年』の連載が終わり、『カラマーゾフの兄弟』の連載を始めるまでの時期の、
・1876年1月〜12月
・1877年1月〜12月
(『カラマーゾフの兄弟』の取り組みのため1878年1月〜1880年7月、1880年9月〜12月は中断された。)
『カラマーゾフの兄弟』連載の末期の、
・1880年8月
(プーシキン講演の草稿を掲載した。)
『カラマーゾフの兄弟』の連載終了後に「作家の日記」を再開した時期の、
・1881年1月
(氏は1881年1月に急逝したため、1881年の発表は1月号のみで終わった。)
の号に掲載された。
(月ごとに2つ〜3つの章からなる文章を掲載。各章は2つ〜6つの内容に分けられている。)
収められている文章の内容
[ ]は分野。
[ ]は収められている号
〔社会評論・政治評論〕
・ロシアという国、ロシア人について論じたもの
[76年2月号]
・裁判制度・陪審員制度、財政などロシアの社会制度について論じたもの
(73年第2号)
・ロシアの青年や婦人や子供や家庭のことを論じたもの
(73年第29号、76年1月号、77年7・8月号)
・ロシア語、ロシアの言葉、ロシア人のフランス語使用など言語・言葉について論じたもの
[76年7・8月号]
・ユダヤ人問題を論じたもの
[77年3月号]
・ドイツや西欧について論じたもの
[76年7・8月号]
・ロシアにとってのアジアを考察したもの
[81年1月号]
など。
〔時事評論〕
・『悪霊』の題材となったネチャーエフ事件[73年第50号]、クローネベルク事件[76年2月号]、カイローヴァ事件[76年5月号]、コルニーロヴァ事件[76年10月号・76年12月・77年4月号・77年12月号]など、当時国内で起こった事件とその裁判と判決の経緯について論じたもの
・当時頻発していた自殺について論じているもの
[76年12月号]
・愛国主義・スラブ民族主義の立場から、露土戦争・コンスタンチノープル領有論等のトルコとの近東問題や聖戦を論じたもの
[76年4月号・6月号・11月号、77年3月号・4月号・10月号・11月号]
・動物愛護協会の活動について論じたもの
[76年1月号]
・当時注目されていた降神術について論じたもの
[76年1月号]
など。
〔文芸評論・芸術評論〕
・トルストイの長編小説『アンナカレーニナ』を論じたもの
[77年2月号、77年7・8月号]
・プーシキン論
※氏が行なった有名なプーシキン講演の草稿が掲載された。
[80年8月号]
・ロシア文学を論じたもの
[77年7・8月号]
・その時期に亡くなったジョルジュ・サンド(氏が影響を受けたフランスの女流作家)の追悼やその文学について論じたもの
[76年6月号]
・セルバンテスの『ドン・キホーテ』についての論
[77年9月号]
・ゲーテの作品(『若きウェルテルの悩み』)に言及したもの
[76年1月号]
・シェークスピアの作品(『ハムレット』)に言及したもの
[76年1月号]
・氏の自作(『未成年』など)について述べているもの
[76年1月号]
・氏の作品への非難について氏の反論
・絵画や展覧会について触れたもの
(73年第13号)
など。
〔回想記〕
・『貧しき人びと』で文壇にデビューしたこと
[77年1月号]
・氏の青年期の出来事やペトラシェフスキー・グループでの活動、逮捕されて銃殺刑を免れた体験のこと
[73年第50号・77年1月号]
・ベリンスキー、ネクラーソフ、ゲルチェンなど関わりのあった師や知人のこと
を回想して記したもの
(73年第1号)
など。
〔小説〕
その時期に氏が創作した
短編小説・中編小説として、
『ボボーク』
(73年第6号)
『キリストのヨルカに
召されし少年』
(76年1月号)
『百姓マレイ』
(76年2月号)
『百歳の老婆』
(76年3月号)
『宣告』
(76年10月号)
『おとなしい女』
(76年11月号)
『おかしな人間の夢』
(77年4月号)
『現代生活から取った
暴露小説のプラン』
(77年5月号)
を掲載している。
《所収・一覧》
・岩波文庫
「作家の日記(1〜6)」
米川正夫訳
・河出書房版全集
巻14「作家の日記(上)」
巻15「作家の日記(下)」
米川正夫訳
・筑摩版全集
巻12〜巻14「作家の
日記(1〜3)」
小沼文彦訳
・ちくま学芸文庫
「作家の日記(1〜6)」
小沼文彦訳
・新潮社版全集
巻17〜巻19「作家の
日記(1〜3)」
川端香男里訳
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