「文学」について短く述べて
いる古今東西の人の言
葉(以下の1〜14)を挙
げました。
1.
文学と科学は、パンと
水のようなものである。
(トルストイ『芸術とは
何か』より。)
※、
解釈は分かれるだろうが、食事中、水(=飲み物)がのど通りをよくし食事に味や潤いを与えるように、文学は、科学のようにパン(=物質的な豊かさや腹の足し)の提供にはあまり貢献できないが、我々の精神生活に楽しみや心の潤いを与えてくれる、と解釈しておきたい。
2.
よい文学があれば、
世界は救われるであろう。
(マラルメ(フランス詩人)
が知人に語ったとさ
れる言葉。)
※、
詩人マラルメの言った言葉として、言葉で巧みに表現されることによる、現実の個々の物やこの世界の真面目(しんめんもく)の再認識(再発見)、という文学の役割も込めて言っているように思います。
3.
予が(=私の)風雅(=俳句)
は、夏炉冬扇(=夏の炉
端や冬の扇。季節はずれ
のもので生活に役立たな
い物)のごとし。衆(=民衆
の実益)にさかひて(=背
いて)用(もちい)る所なし。
(松尾芭蕉。弟子の
許六(きょりく)に与
えた文章の中の
言葉。)
※、
私が作る俳諧は民衆の実生活には無用だろうが、私など文学を愛する者には、俳諧は、少なくとも、価値ある大切なものである、という思いも込めているのでしょう。
4.
文学―言葉の芸術(言
葉を媒介にした芸術)。
(某国語辞典)
5.
やまと歌は人の心を
種(たね)として、よろ
づの言の葉(ことのは。
ことば)とぞなれりけ
る(=となったことよ)。
(紀貫之。『古今集』
の仮名序より。)
6.
文体とは、その人
そのものである
(=文は人なり)。
(ビュッフォン)
7.
物語は、世の中の物の
あはれ(もののあわれ)
のかぎりをかき集めて、
読む人を深く感ぜしめ
んと(=感動させようと
して)作れる物なり(=作
った物である)。
(紫式部。『源氏物語』より。)
※、
・物のあはれ=(哀切な)物事に触れて、心にしみじみと感じる深い感動。
本居宣長(江戸時代中期の国学者)は、『源氏物語』に多用される「あはれなり」「物のあはれ」という表現に注目し、「物のあはれ」を、『源氏物語』ひいては日本の文学の理念であるとした。
8.
文学の面白さは、慰み
もののそれ(=面白さ)と
は異なり、人生的な面白
さである。
(桑原武夫。『文学入
門』(岩波新書)のp25。)
9.
事実は小説より奇なり。
(諺?)
10.
芸術は社会を模倣
する。社会は芸術を
模倣する。
(?)
※、
「芸術」を「小説」と置き換えても、あてはまるでしょう。
11.
文学は、なくてもすませ
る精神のアクセサリー
ではない。文学は精神
の最も強力な機能の一
つである。
(ヘッセ)
12.
文学は私のユートピアである。
(ケラー(スイスのドイツ系作
家)の『自叙伝』より。)
13.
文学は、言語のユートピ
アである。
(ロラン・バルト。『エク
リチュールの零度』
の末部の言葉。)
14.
音楽が人を救うことがあ
るように、ひょっとしたら
小説にもそういった奇跡
的な効能があるのかも
しれません。
(安壇美緒(現代日本の若
女性作家)の文学賞を得
た際のインタビューの席
での発言。)
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