「入門書・読書」案内
(更新:24/02/26)
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説明: http://ss390950.stars.ne.jp/bo.gifどの小説から・どのキストで
読むか

(更新:24/02/26)

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説明: http://ss390950.stars.ne.jp/bo.gifおすすめのドストエフスキー論書





どの小説から・どのテキスト
で読むか

(
更新:24/02/26)


最初に読んだらいい小説
としては、
 
  
長編『罪と罰』
中編『貧しき人びと』
長編『カラマーゾフの兄弟』

を、すすめます。


読んで多くの読者の期
待を裏切らない小説
は、

『罪と罰』
『貧しき人びと』
『死の家の記録』

といったあたりでしょうか。


『カラマーゾフの兄弟』
は、
早い時期にじっくり
読むこと
を、すすめます。

『地下室の手記』『悪霊』などは、
内容に少なからず毒
気があるので、のちに
読む
ことを、すすめます。


読んでいく順番
としては、

長編
『罪と罰』  
→  長編
『カラマーゾフの兄弟』 
→  長編
『死の家の記録』 
→  中編
『貧しき人びと』 
→ 長編
『虐げられた人びと』  
→  長編
『白痴』 
→  中編
『地下室の手記』 
→  長編
『未成年』  
→  長編
『悪霊』 
 
といった順を、すすめます。

最初に読む三作として、
  
        
・長編
『罪と罰』 
→ 中編
『貧しき人びと』 
→ 長編
『カラマーゾフの兄弟』
 
・中編
『貧しき人びと』 
→ 長編
『罪と罰』 
→ 長編
『カラマーゾフの兄弟』

・中編
『白夜』 
→ 長編
『罪と罰』 
→ 長編
『カラマーゾフの兄弟』

・長編
『カラマーゾフの兄弟』 
→ 長編
『虐げられた人びと』 
→ 長編
『罪と罰』
 
・長編
『死の家の記録』 
→ 長編
『カラマーゾフの兄弟』 
→ 長編
『罪と罰』  

などの順は、どうでしょう。 
 
     
     
テキストの案内
作品の内容のミニ案内


( →   )として記したテキストは手頃に入手できる、おすすめの邦訳テキスト。 ▲を付した分は現代口語訳で読みやすいテキスト。aを付した分がおすすめ。
b
を付した本は、
現在市販中のもの。          
・「=」は、同テキスト。


三つある
ドストエフスキー全集の分
については、訳文を比較すると、

新潮社版の分
は、各訳者が平易な口語訳を心掛けていて現代の若者には読みやすい。

米川正夫個人訳の
河出書房新社版の分
は、文語調・漢語調の箇所が含まれていて、 文語調・漢語調の文を読み慣れていない読者にはやや読みづらいかもしれないが、 そのぶん、格調のある訳文体になっている。各登場人物の会話文は、その登場人物 にふさわしい言い回しにしている。

小沼文彦個人訳の
筑摩書房版の分
は、文体にくせがなくて、比較的、すらすらと読みやすい。訳注は、比較的、豊富。

などが言えるでしょう。
   


長編
『罪と罰』
ドストエフスキーの小説の中で最もポピュラーであり、ストーリーの面白さ・興奮・感銘ともに非凡な傑作から入ってみたい人に。

新潮文庫(二冊)b▲=新潮世界文学巻10b▲、
a
岩波文庫(新訳版の江川卓のぶん・三冊)b▲、 
a
光文社古典新訳文庫(三冊)b

新潮文庫の分(工藤精一郎訳)・岩波文庫の分(江川卓訳)は、どちら も、甲乙つけがたい名訳。岩波文庫の分(江川卓訳)は、訳がやや荒削りでくせがあるかもしれないが、『罪と罰』の小説世界の雰囲気をうまく伝えている。新潮文庫の分(工藤精一郎訳)はくせがなく、すらすらと読みやすい。 

光文社古典新訳文庫の分(亀山郁夫訳)は、新訳として、平易な口語訳を心掛けていて、すらすらと読みやすい。割注はなし。

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長めの長編
『カラマーゾフの兄弟』
ドストエフスキーの総決算としての、最後の円熟した大作からいきなり入って、ドストエフスキーの最後の造型になる典型的な登場人物たちや、ドストエフスキーの「人間苦と愛とゆるし」の宇宙に、どっぷりと浸(ひた)りたい人に。 
 
a
新潮文庫(三冊)b▲=新潮世界文学(一巻本)b
a
岩波文庫(四冊)b
a
光文社古典新訳文庫(五冊)b

新潮文庫の分(原卓也訳)は、平易な口語訳を心掛けていて、すらすらと読みやすい。割注が多く付されている。

光文社古典新訳文庫の分(亀山郁夫訳)は、新訳として、平易な口語訳を心掛けていて、すらすらと読みやすい。割注はなし。訳者の間では少なからずの誤訳があるという指摘もあり誤訳を正した今後の改訂版の刊行が待たれている。

岩波文庫の分(米川正夫訳)は、文語調・漢語の箇所があり、そういった文体に慣れていない読者は読むのに苦労するかもしれない。そのぶん、訳文には格調はある。各登場人物にふさわしい話体にしている。テキストは、活字がやや薄くて、そのぶん、やや読みにくい。

品切れ中ながら、中央公論社文庫の分(池田健太郎訳)も、労作の名訳。 


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長編
『白痴』
善意の青年を主人公にした悲劇的恋愛小説を読んでみたい人に。

a
新潮文庫(
冊、木村浩訳)b▲=新潮世界文学(一巻本)b▲、
岩波文庫(二冊、米川正夫訳)
a
河出文庫(三冊、望月哲
男訳)b▲、
光文社古典新訳文庫(四冊、亀山郁夫訳)b

新潮文庫の分(木村浩訳)は、読みやすい名訳。
原文の文体を活かすような本文にしている河出文庫の新訳(望月哲男訳)は、注解が役立つ。



長編
『悪霊』
社会革命活動へと走る当時の青年群像たちを中心とした、ドストエフスキーの世界の一極たる無神論的(人神論的)喧噪(けんそう)の世界に触れたい人に。

a
新潮文庫(
冊、江川卓訳)b▲=新潮世界文学(一巻本)b
a
岩波文庫(二冊、米川正夫訳)b
a
光文社古典新訳文庫(三冊、亀山郁夫訳)b


新潮文庫の分(江川卓訳)は、当時の発表では削除された章「スタヴローギン の告白」は、各版の本文の異同を明示して、末部に独立させて置かれていて、ステパン氏の会話文の中のフランス語の箇所は、すべてカタカナ書きにしている。

岩波文庫(米川正夫訳)の分は、章「スタヴローギンの告白」を第8章と第9章の間に入れて通読できるようにしていて、訳文は文語調の箇所があり。

光文社古典新訳文庫の分(亀山郁夫訳)は新訳としてすらすらと読みやすい。別巻で章「スタヴローギンの告白」の異なる本文の異同を確認できる。

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中編
『貧しき人びと』
初老の独り者の男と若い女性の間で取り交わされる往復書簡体小説を読んで見たい人に。氏の処女作にして出世作をまず読んでみたい人に。

a
新潮文庫(木村浩訳)b▲、
光文社古典新訳文庫(安岡治子訳)b

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長編
『死の家の記録』
実録体験記を好む人に。4年間にわたるシベリア流刑中のドストエフスキーの囚役生活のことを詳しく知りたい人に。

a
新潮文庫(工藤精一郎訳)b▲、
光文社古典新訳文庫(望月哲男訳)b


 
長編
『虐げられた人びと』
ドストエフスキーの小説としては思想的な面があまり出ていない、善玉悪玉がはっきりしていて、読み手の袖(そで)を絞(しぼ)る通俗風の家庭・恋愛小説を好む人に。

新潮文庫(小笠原豊樹訳)b


               
中編
『白夜』
夢想家の青年を主人公にしたメロドラマ風の純愛ものを好む人に。

a
角川文庫(小沼文彦訳)b▲、
講談社文芸文庫(井桁貞義訳)b

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長編
『未成年』
離れ離れに暮らしていた実父のことを知るべく、ペテルブルグに乗り込んだ青年の都会での一年半余りにわたる種々の体験記(回想記)を読んでみたい人に。
 

 a
新潮世界文学(一巻本、工藤精一郎訳)▲=新潮文庫(二冊)▲、
岩波文庫(三冊、米川正夫訳)
光文社古典新訳文庫(三冊、亀山郁夫訳)b▲。



中編
『地下室の手記』
中年の主人公が独白する人間論・文明批判(1)や、青年期の回想話(2)に耳を傾けてみたい人に。

a
新潮文庫(江川卓訳)b
光文社古典新訳文庫(安岡治子訳)b
集英社(亀山郁夫訳)▲ 


          
長めの短編
『おかしな人間の夢』
ドストエフスキーのエッセンスが凝縮されているような短編をまずんでみたい人に。SF的な小説を好む人に。

ちくま学芸文庫『作家の日記4』(小沼文彦訳)



短めの中編
『おとなしい女』
短編『おかしな人間の夢』と相並ぶドストエフスキーの短編の代表作であり、妻を支配下に置こうとする寡黙な中年男とその若妻との、夫婦生活における相互の心理的葛藤の跡を回想する告白記を読んでみたい人に。

a
ちくま学芸文庫『作家の日記3』(小沼文彦訳)
講談社文芸文庫(井桁貞義訳)b



中編
『永遠の良人』
妻を寝取られた男とその寝取った男の間に展開する、ドストエフスキー的と言える風変わりな復讐話を読んでみたい人に。

新潮文庫(千種堅訳)b




長めの中編
『分身(二重人格)
職場での出世争いに敗れていく下級官吏の悪戦ぶりに付き合ってみたい人に。
 
岩波文庫(小沼文彦訳)b




ドストエフスキーの小説の分類例

ドストエフスキーの知ら
れた代表的な二大小説

『罪と罰』
 
『カラマーゾフの兄弟』


自他とも認めるドストエ
フスキーの芸術・思想
の集大成としての(未完
ながらの)最高傑作

『カラマーゾフの兄弟』


ドストエフスキーの五
大長編小説(発表順に)

『罪と罰』
『白痴』
 
『悪霊』
『未成年』
 
『カラマーゾフの兄弟』
 

『罪と罰』『カラ兄弟』以外
で、多くのドストエフスキー
の研究者に芸術的に傑
作と評されている小説

『悪霊』
『白痴』
(
悲劇のラストシーンは秀逸)
『永遠の夫』


一部のドストエフスキー研究
者が傑作と評している小説

『未成年』
(
傑作でありながら、五大
長編の中では知名度が
低く影が薄い小説)
『死の家の記録』
『地下室の手記』


読者には比較的
親しみやすい小説

『貧しき人びと』
『白夜』
『虐げられた人びと』
 
『白痴』


ドストエフスキー研究者や
内外の作家の中で愛
読している人が多い小説

『白痴』
『死の家の記録』
 
『貧しき人びと』
『カラマーゾフの兄弟』
『キリストのヨルカ
に召されし少年』  


ドストエフスキーの一面(
黒や悪の方面)の才能が
発揮されていて、思想面
で毒気を含む問題小説

『悪霊』
『地下室の手記』


発表時のロシアの読書
界で歓迎され熱心に
読まれた小説

『罪と罰』
 
『虐げられた人びと』
 
『カラマーゾフの兄弟』
『貧しき人びと』


ドストエフスキー研究者に
欠陥やあらが見える作・失
敗作と指摘されている小説

『白痴』
『分身』
『虐げられた人びと』

ドストエフスキー自身、出来
具合において不本意な
ものとしていた小説

『死の家の記録』
(
当局の検閲を考慮し、
抑えて書いている)
『白痴』
(
言いたいことの十分
の一も言えなかった)


未完に終わっている小説
『カラマーゾフの兄弟』
 
『ネートチカ・ネズワーノワ』


ドストエフスキー自身が
愛していた小説

『貧しき人びと』
 
『白痴』
『カラマーゾフの兄弟』
 
『初恋(=小英雄)
『百姓マレイ』


内容の大半がドストエフ
スキーの体験を描い
ている実録小説

『死の家の記録』
 
『賭博者』 

        
小説の手法において
注目されている小説

『悪霊』
『未成年』
『おとなしい女』


意表をつく斬新な内容や
展開で注目される小説
『おかしな人間の夢』
 
『分身』
『ボボーク』
『鰐』


ユーモラスな場面が多い、軽
い喜劇ふうの小説(知名度の
低い、中期の二大中編小説)

『スチェパンチコヴ
ォ村とその住人』
『伯父様の夢』 
 

ドストエフスキーの三大短編小説
とされている小説

『おとなしい女』
(
実際は中編小説)
『おかしな人間の夢』
 
『ボボーク』 






入門書の案内

「ドストエフスキー及び
ドストエフスキー文学」の
全般に関して比較的平
易に多面的に紹介してい
る「入門書」として、
次の本(af )など
が、おすすめ。 


a

『ドストエフスキーのおもしろさ 
― 言葉・作品・生涯』

中村健之介著。岩波ジュニア新書。
1988
年刊。

※、見開きごとに最初にドストエフスキーの言葉や作中の言葉を挙げつつ、ドストエフスキーのこと全般を多面的に紹介している。末部に「ドストエフスキーの生涯」「主要作品の解説」あり。 

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b

『ドストエフスキー伝』 
アンリ・トロワイヤ著、村上香住子訳。1982年中央公論社刊・中公文庫1988年刊。

※、ドストエフスキーの生涯の主要事跡を活写した好著(文庫本で全700ページあまり)。途中、主要作品論も含む。





c

『ドストエフスキー人物事典』
(
中村健之介著。朝日選書399。朝日新聞社1990年初版。2011年講談社学術文庫


※、ほぼ全小説の登場人物の解説と論。末部の「ドストエフスキー略年譜」も重宝できる。





d

『文芸読本ドストエーフスキー()
河出書房新社1976年初版。

※、古今東西のドストエフスキー論の精髄やエッセイが収められている。「アルバム・ドストエフスキー」「ドストエフスキー小伝」「ドストエフスキー年譜」「ドストエフスキー文献」、中編「白夜」全文・「大審問官の章」全文も所収。   

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e

『ドストエフスキー・写真と記録』 
ネチャーエワ編、中村健之介編訳。論創社1986年初版。
※、生涯を12の時期に分けて、各時期に事項を設けて、その各事項について、ドストエフスキーや同時代人たちが残した言葉・証言やドストエフスキーの作中の文章を並べて紹介している。最終章には、後世影響を受けた東西の人物たちのドストエフスキー評も収められている。ドストエフスキーの写真や肖像、本国のテキストの中の挿絵やイラストや関連図絵なども各ページごと多数掲載されている。家系図・年譜、中村氏作成の年代記も付されている。



f

『ドストエーフスキイ研究』 
米川正夫著。米川正夫個人訳ドストエフスキー全集の別巻。1970年初版。

※、ドストエフスキー伝、主要作品研究、伝記上の参考文献、年譜、ドストエフスキー文献、を収めている。



おすすめのドストエフスキー論書

著者の良心的で真摯(しんし)
な意気込みや問題意識が
表れていて、考えさせられ、
心打たれた本を中心に選。
(
次のai )
 
a
ベルジャーエフ著
『ドストエフスキーの世界観』

(斎藤栄治訳、ベルジャーエ
フ著作集の第2巻。白水社
1960
年刊初版。筑摩書房
刊ドストエフスキー全集の別
巻にも所収(宮崎信彦訳)
新装復刊版(20095
白水社刊))

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b

中村健之介著
『ドストエフスキー・
生と死の感覚』

(岩波書店1984年初版。)


c
森有正著
『ドストエーフスキー覚書』 

(
筑摩叢書82。筑摩書房

1967年初版。筑摩書房
1978
年刊「森有正全集」
8にも所収。ちくま学芸文
庫・20124月刊(再版))


d
勝田吉太郎著
『神なき時代の預言者
― ドストエフスキー考』

(教文社1984年刊。)

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e
吉村善夫著
『ドストエフスキイ ― 近
代精神超克の記録』

(新教出版社1965
初版。1987年に同社
より復刊。)


f
森和朗著
『ドストエフスキー 闇
からの啓示』

(
中央公論社1993年初版。)


g
川喜田八潮著
『脱「虚体」論 ― 現
在に蘇るドストエフスキー』

(
日本エディタスクール出
版部1996年初版。)

19727761


h
清水孝純著
『道化の風景 ― ドス
トエフスキーを読む』

九州大学出版会
1994
年初版。


 
i
小林秀雄の
「「罪と罰」について(12)
「「白痴」について(12)
「「カラマアゾフの兄弟」」

(新訂「小林秀雄秀雄
全集」第6(1978
新潮社刊)に所収。)


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