生涯飽くことなく人間のことを観察し探求し続けたドストエフスキーが残した言葉のうち、名言と思う言葉(現在計45の言葉)を事項別に分けて挙げました。
★は、特に感銘を受けた言葉。
〔事項〕
( )は挙げた言葉の数。
生について(2)
人生について(2)
人の一生について(2)
人の生き方について(10)
生活について(2)
女性の生き方について(3)
この世の人間について(3)
愛について(6)
恋愛について(1)
人間関係について(6)
幸福について(5)
美について(2)
お金について(1)
〔生について〕
生より尊いものが、なにがあろう! なにもないのだ、なにも!★
( 『カラマーゾフの兄弟』より。)
地上の地獄とは愛のない生のことだ。★
( 『カラマーゾフの兄弟』より。)
〔人生について〕
人の一生は――贈物です、人生は――幸福です。そのそれぞれの瞬間が幸福になりうるものなのです。★
( 書簡より。)
人生を恐れてはいけません! なんでも正直ないいことをしたときには、人生はなんと美しいものに思われることでしょう。
( 『カラマーゾフの兄弟』より。)
〔人の一生について〕
青春は、それが青春という理由だけでもう清らかなのである。
( 『未成年』より。)
人間の後半生は、通常、その前半生で蓄積された習慣のみで成り立つ。
( 『悪霊』より。)
〔人の生き方について〕
節度を知りなさい。時宜を心得なさい。それを学びなさい。★
( 『カラマーゾフの兄弟』のゾシマ長老の言葉。亀山郁夫訳。)
堪え忍べ、働け、祈れ、そしてつねに希望を持て。これがわたしが全人類に一度に吹き込もうと願っている真理なのです。
( 『スチェパンチコヴォ村とその住人』より。)
希望を持たずに生きることは、死ぬことに等しい。
( 書簡より。)
どうにも暇(ひま)をもてあましたら、誰かか、あるいはなにかを、愛するようにつとめることだな、ただなにかに熱中するのもよかろう。★
( 『未成年』より。)
理想と熱意がなかったら、どんなことだって紋切り型のくりかえしになってしまう。★
( 『ペテルブルグの夢』より。)
あまりに意識しすぎるのは、病気である。正真正銘の完全な病気である。人間、日常の生のためには、世人一般のありふれた意識だけでも、充分すぎるくらいなのだ。
★
( 『地下室の手記』より。)
中庸を失った人間は破滅する。
( 『未成年』より。)
人間は身持ちをよくしなければならない。身持ちが悪いというのは、つまり自分を甘やかしている証拠で、悪い性癖は人間をほろぼし、台なしにしてしまうものだ。
( 『貧しき人々』より。)
各個人の自己完成が《いっさいのみなもと》であるばかりでなく、いっさいの継続であり結末である。
( 『作家の日記』より。)
笑うことがいちばんですよ! 笑うにまさる福なしです。
( 『未成年』より。)
〔生活について〕
土地が変われば、私たちはみんな元気になるだろう。土地が変わるということは、何もかもが変わるということだからね。★
( 『虐げられた人びと』より。)
われわれ自身の精神とその内容が豊富になればなるほど、われわれの住んでいるむさくるしい片隅や生活も、またそれだけ美しくなっていくものです。
( 書簡より。)
〔女性の生き方について〕
女にとっての復活は、あらゆる破滅からの救いと更生は、愛のなかにある。
( 『地下室の手記』より。)
よき妻、また、特によき母となること――これは女性の使命としては最高のものです。★
( 書簡より。)
女、女こそ男を完成させる唯一のものである。★
( ※所在、未確認。)
〔この世の人間について〕
世の中にはまったく立派な人間が実に大勢いるものなのですね。
★
( 書簡より。)
聖者というものは、非常に高価なダイヤモンドだからね。こういうひとりの人間は、ときによると、一つの星座ほどの値うちがあるよ。★
( 『カラマーゾフの兄弟』より。)
人間というものは罪深いものだ。
( 評論「ロシア文学論」より。)
〔愛について〕
愛なしにはなにも認識できない。愛によって多くのものを認識できる。★
( 「メモノート」より。)
愛は労働だ。愛もまた学びとらねばならないものだ。★
( 『カラマーゾフの兄弟』より。)
地獄とは何か、それはもはや愛せないという苦しみだ。
( 『カラマーゾフの兄弟』より。)
愛、実にこれが人生のすべてだよ。
( 『地下室の手記』より。 )
愛より尊いものがあるでしょうか? 愛は存在よりも高く、愛は存在の輝ける頂点です。
( 『悪霊』のステパン氏の言葉。)
愛は人間を平等にする。
( 『白痴』より。)
〔恋愛について〕
かまやしない、どうなったってかまうものか、――この一瞬のためには世界中でも、くれてやる。
★
( 『カラマーゾフの兄弟』より。)
※、『カラマーゾフの兄弟』において、モークロエ村にての、グルーシェンカとの逢瀬の際のドミートリーの言葉。米川正夫訳。
〔人間関係について〕
親しい人たちと、縁者たちと、愛する人たちと心を許しあって暮らす――これが天国だよ。★
( 『未成年』より。)
家庭の幸福以上に大事なものはこの世の中にはなにひとつない。★
( 書簡より。)
思いやり(同情)こそは最も重要な、そしておそらくは全人類の唯一の生活の規範なのだ。
( 『白痴』より。)
人間の情け深さと人間の相互愛を確信することよりも、大きな幸福はない。これは、信仰だ。まったく一生をかけての信仰だ! この信仰よりも大きな幸福があろうか!★
( 『作家の日記』より。)
他人に尊敬されたいのなら自分自身を敬うがいい。自分自身に敬意を払うことによってのみ他人はあなたを敬うようになるだろう。
( ※所在、未確認。)
他人に対してもっとやさしく、もっと気をつかい、もっと愛情を持つことです。他人のために自分を忘れること、そうすればその人たちもあなたを思い出してくれます。自分も生き、他人をも生かすようにする――これが私の信条です!
( 『スチェパンチコヴォ村とその住人』より。)
〔幸福について〕
それにしても、喜びと幸福は、なんと人間を美しくするものか! なんと心は愛にわき立つものか!★
( 『白夜』より。)
幸福な人間はつねに善良である。★
( 『未成年』より。)
人間というものは、不幸のほうだけを並べたてて、幸福のほうは数えようとしないものなんだ。ちゃんと数えてみさえすれば、だれにだって幸福が授かっていることが、すぐわかるはずなのにね。
( 『地下室の手記』より。)
私には、幸福とはどうも――人生に対する明るい見方と曇(くも)りのない心の中にあるものであって、外面的なものにあるのではないように思われます。★
( 書簡より。)
幸福は徳行の中にこそ含まれているものである。
( 『スチェパンチコヴォ村とその住人』より。)
〔美について〕
美(び)なるものが世界を救う。★
( 『白痴』より。)
※、『白痴』で、ムイシュキン公爵の言った言葉としてイポリートが述べたもの。
晴れた空、清い空気、若い草、愛らしい小鳥、自然は限りない美の世界である。
( 『カラマーゾフの兄弟』より。)
〔お金について〕
金は鋳造された自由である。だから自由をすっかり剥奪された人間にとっては十倍も尊い。金がポケットの中でちゃらちゃら鳴っていさえすれば、彼はもう、それを使うことができなくても、なかば慰安を与えられているのだ。★
( 『死の家の記録』より。)
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