< 問題本文 (1〜10) >
【正解】
1 … 『罪と罰』
の第1部第6内のもの。
2 … 『カラ兄弟』
の第8編第6「おれが
来たんだ!」内のもの。
3 … 『死の家の記録』
の第二部「五、夏
の季節」内のもの。
4 … 『カラ兄弟』
の第5編第「大審
問官」内のもの。
5 … 『カラ兄弟』
の第7編第3「一本
の葱(ねぎ)」内のもの。
6 … 『罪と罰』
の「エピローグ」の
第2内のもの。
7 … 『悪霊』
の第3部第7章「ス
テパン氏の最後の放
浪」の第3内のもの。
8 … 『白痴』
の第1編第16内のもの。
9 … 『カラ兄弟』
の第2編第6「こんな
男がなぜ生きているん
だ!」内のもの。
10 … 『悪霊』
の第3部第4章「最後
の決定」の第3内のもの。
【解説・コメント・気付き】
1 … ラスコーリニコフが金貸し老婆の殺害の前に自部屋で見る夢の中に出てくるシーンを描写した箇所であり、キャラバン隊に参加している彼が砂漠のオアシスで休憩している時の、そばを流れている小川の様子を描写している。ドストエフスキーの場面描写としては、その多彩な色彩感が実に印象的な箇所。
ちなみに、この箇所は、なにやら、小林秀雄と友人の仲だったあの中原中也の有名な詩「一つのメルヘン」を想起させるものがあります。
2 … グルーシェンカが滞在するモークロエ村へドミートリイが馬車を走らせ、モークロエ村の建物が夜の闇の中に見えてきた時の夜景を描写した箇所。
3 … シベリヤ流刑中、戸外での煉瓦(れんが)運びの囚役作業の合間に、「そこからは神の世界が見えたからである」(p347)と前置きして、主人公がイルトゥイシ河畔から眺めた広大な眺望を描写している箇所。この箇所は、私に、松尾芭蕉の句「この秋は何で年寄る雲に鳥」「山路(やまじ)来て何やらゆかし(心ひかれる=)菫草(すみれぐさ)」を想起させました。
4 … 再来するも捕縛されて牢(ろう)に閉じこめられたイエスのもとに、大審問官がいよいよ訪れる時の場面描写。西東三鬼の俳句「暗く暑く大群衆と花火待つ」の上(かみ)の句「暗く暑く」は、この箇所の表現を踏まえているのではないかと思われます。
5 … モークロエ村に滞在している初恋の人であるポーランド人の男から声がかかり、その時アリョーシャとラキーチンの来訪を受けていたグルーシェンカが、彼のもとへ行こうと決意して、言った言葉。「犬ころ」は、グルーシェンカが、自分のことを指して言ったもの。
6 … ラスコーリニコフがシベリヤの監獄で病院に収容され、ある日、ふと病室の窓辺から外を眺めて、病院の門のところにたたずんで何かを待っている風情(ふぜい)のソーニャを見ての、彼の反応を示した箇所。「その瞬間彼は、何かが彼の心を貫いたような気がした。彼はぎくっとして、急いで窓をはなれた。」
7 … 放浪に出たステパン氏の行き先に駆けつけたワルワーラ夫人と、ステパン氏のそばに寄り添っていた若い女性ソフィアとの会話。長年寄り添ったステパン氏に向けてのワルワーラ夫人の思いが示されていて、作中、泣かせどころの一つ。
8 … 第1部の末部、ナスターシャ‐フィリポヴナがロゴージンたちと出ていったあと、ブチーツィンがトーツキイ
に向かって言う言葉。ドストエフスキーが作品の中で日本に関して言及している唯一といっていい箇所。
9 … 僧院で一堂に会した場で、フョードルが、僧侶たちに向かってグルーシェンカのことを擁護して言った言葉。
10 … 脱獄囚フェージカがピョートルに向かって言った言葉。
< 問題本文 (11〜20) >
【正解】
11 … 『死の家の記録』
の第一部「十一、
芝居」内のもの。
12 … 『罪と罰』
の第1部第2内のもの。
13 … 『貧しき人びと』
の終部のもの。
14 … 『死の家の記録』
の第一部「九」内のもの。
15 … 『賭博者』
の第10章内のもの。
16 … 『罪と罰』
の第2部第7内のもの。
17 … 『永遠の夫』
の終部のもの。
18 … 『カラ兄弟』
の第8編第8「夢
幻境」内のもの。
19 … 『死の家の記録』
の第二部の「六、監獄
の動物たち」内のもの。
20 … 『白痴』
の第1編第3内のもの。
【解説・コメント・気付き】
11 … シベリヤ流刑時代の夜の監獄内の、囚人たちのねぐらの光景。監獄内で寝起きしたドストエフスキーの体験の実感や暗い狭いその部屋の中の様子がリアルに読者に伝わってくる印象的な箇所。
12 … 居酒屋でマルメラードフがラスコーリニコフに向かって自分のような人間に対する神のゆるしへの信仰を語る有名なシーン、の末部のマルメラードフの絶唱の言葉。
13 … ワルワーラが婚約者ブイコフ氏に伴って町を去ることを知ったマカール‐ジェーヴシキンが、彼女を引きとめようと、いとしい彼女へ向けて、彼女に届くともわからず、切々(せつせつ)と書いた最後の手紙の中の言葉。ちなみに、ヘッセの名作『車輪の下』の題名は、もしかして、この箇所から取った?
14 … 「浴室の戸をあけたとたんに、わたしは地獄に突き落とされたかと思った。」で始まる、監獄の囚人たちでぎゅうぎゅう詰めになった監獄内の浴場の様子を活写した場面(p186〜p188)の一節。ツルゲーネフによって、「ダン テ的だ」と絶賛された箇所。神西清の評「クリスマスが近づいて、囚人たちが久しぶりで入浴を許された時の情景である。さながら一幅の地獄絵がミケランジェロを思わせる逞(たく)ましい構成をもって描き出されている。怖るべき狂躁の図柄ではあるが、しかもそこには一抹(いちまつ)の悪魔的なグロテスクさもなく、全画面が殆(ほと)んど原始的なまでの生の躍動に塗りつぶされている。この健康さに注意すべきだ。」
15 … 皆にお祖母さんと呼ばれている活発な老女アントニーダ‐ワシーリエヴナ‐タラセーヴィチェワが、賭博場にいって、大当たりした際のリアクションを描写したもの。
16 … 馬車にぶつかったマルメラードフがかつぎこまれた自宅の部屋で息をひきとり、ラスコーリニコフがその帰り際、階段の下でソーニャの幼い妹ポーレチカに呼び止められ対面する場面。ドストエフスキーの少女の描写には、つねに生彩がある。
17 … 後日談である最終章で、列車の中で偶然、昔妻を寝取ったヴェリチャーニノフに出会ったトルソツキーが、自分の娘ではないことを知ってからはひそかに虐待していた自分の今は亡き娘(実はヴェリチャーニノフとの間にできた娘)への思いを述べて涙をほとばしらせる場面。作中、泣かせどころの一つ。
18 … ドミートリイがやってきたモークロエ村でのどんちゃん騒ぎの中、初恋のポーランド人との再会に幻滅し、酩酊(めいてい)したグルーシェンカが言う言葉。グルーシェンカの隠れた真情が思わず吐露されていて、心打たれる箇所。
19 … 監獄の敷地内にいた犬たちのことを描写した箇所。虐げられたものたちへのドストエフスキーのやさしい心根(こころね)やいたわりが現れていて、心打たれる箇所。
20 … ロゴージンはナスターシャ‐フィリポヴナと結婚するでしょうか、とのガーニャの問いかけに対して、たとえ結婚したとしてもたぶん一週間もたたないうちに彼はあの女を斬り殺してしまうでしょう、とのムイシュキン公爵の予言的な即答に、青年ガーニャが反応するきわめて印象の強い箇所。
< 問題本文 (21〜30) >
【正解】
21 … 『未成年』
の第1部第1章
の3内のもの。
22 … 『白痴』
の第4編第11内のもの。
23 … 『悪霊』
の第3部第7章「ステ
パン氏の最後の放浪」
の第1内のもの。
24 … 『カラ兄弟』
の第4編第3「中学生た
ちとの結びつき」内のもの。
25 … 『白痴』
の第3編第10内のもの。
26 … 『罪と罰』
の第3部第6内のもの。
27 … 『虐げられた人びと』
の第2部の末部。
28 … 『カラ兄弟』
の第9編第8「証人
たちの供述。童(わ
らし)。」内のもの。
29 … 『悪霊』
の第1部第2章
「ハリー王子。縁談」
の第1内のもの。
30 … 『二重人格(分身)』
の第10章内。
【解説・コメント・気付き】
21 … ペテルブルグに乗り込んできたアルカージイが、秘書として雇われたニコライ老公爵宅の書斎を訪れて、両者、女性談義に花が咲いた際、女性通のニコライ老公爵が言う言葉。
22 … 終盤、ロゴージン宅を訪れたムイシュキン公爵が、ついにロゴージンの刃にたおれたナスターシャ‐フィリポヴナを寝かせているらしい、薄暗い、カーテンが引かれてあるベットの方へ向けて言う、印象的な一言。
23 … 放浪に出たステパン氏が、片田舎の街道を歩いていく途中、ふと我に返り、四方をはるか見渡した時の眺めを描写している箇所。ドストエフスキーの小説には、まれにこういった周りの自然風景の描写が現れるが、清水正氏は、その著『ドストエフスキー『悪霊』の世界』で(p298〜p299)、この描写箇所に、ステパン氏のことを暗示する象徴的な意味合いを読みとっている。
24 … 運河をはさんで子供たちが石を投げつけ合って争いをしているのに出会ったアリョーシャが、一人で応戦している子供(イリューシャ)の側におもむき、アリョーシャにも歯向かおうとするイリューシャに繰り返しわけを問いただした時の、イリューシャの最終の反応のシーンを描写した箇所。
25 … ロゴージンと式をあげることになっていたナスターシャ‐フィリポヴナが、約束した公園でムイシュキン公爵に会って、いきなり往来にひざまずき、涙を流しつつ公爵に問いかけるシーン。ナスターシャは、その以前から公爵とアグラーヤが結びつくよう、画策(かくさく)していた。
26 … ラスコーリニコフが、夢の中で、老婆殺害の現場に行き、部屋のすみに老婆を見つけて、うつむいている老婆を再び斧でなぐりつけるも効き目がないというシーン。
27 … 私(語り手イワン‐ペトローヴィチ)が孤児ネリーに出会って親しくなり、子供ながらにネリーが語った、ネリーの亡くなった母親のペテルブルグでの悲惨な物語を私が総括して短く解説した箇所。
28 … 家長殺害事件の尋問を受けたドミートリイが、尋問が終わった後、部屋の奥で横になってうたた寝をして、夢の中で、荒野でひもじく泣いている極貧の親子の姿を見かけ、彼らを何とかしてあげたいと思った時にドミートリイに生じたこととその夢からの覚醒(かくせい)のシーンを述べた箇所。「どうしたんだ? どこへ行くんだ?」という覚醒の言葉には、失礼ながら、読んだ際思わず吹き出しちゃいました。
29 … 故郷の街に四年前に戻ってきた時のスタヴローギンの風貌を描写した箇所。ドストエフスキーの小説では、登場人物が最初に登場した際のその人物の容姿についてのデッサン風の描写はいずれもその登場人物の性格をたくみに示したものになっていますが、このスタヴローギンの顔についての描写は、とりわけ生彩を放つ傑作と言えるでしょう。
30 … 自分と瓜二つの人物(新ゴリャートキン氏)が勤め先の部署に登場して活躍する中、彼に劣る自分を意識し始めたゴリャートキン氏(旧ゴリャートキン)が夢に見た出来事を描写している箇所。夢の中で自分と瓜二つの人間があふれていくといったこの内容は、ドストエフスキーのオリジナルなのか、ちょっと気になります。人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に主人公両津勘吉にそっくりの人間が街にあふれるという一話がありましたが、原作者の秋元治氏は『二重人格(分身)』のこの箇所を踏まえたのかなと私などは思ってしまいます。
< 問題本文 (31〜32) >
【正解】
31 … 『罪と罰』
の第2部の3内のもの。
32 … 『白夜』
の「第4夜」内のもの。
【解説・コメント・気付き】
31 … ラスコーリニコフの下宿を訪れた世話好きの友人ラズミーヒンが、病後でベットに横になっているラスコーリニコフの食事の世話をする、ほほえましいシーン。
32 … 現れない恋人にいまだ未練があるナースチェンカと彼女への思いを募らせる主人公の私とが寄り添(そ)ってペテルブルグの街を徘徊(はいかい)する様子を述べた箇所。
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