ドストエフスキーの
小説の典拠
(更新:24/02/04)
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ドストエフスキーの小説の、
登場人物のモデル、スト
ーリーや内容の典拠、ど
ういう背景や影響のも
とに創作されているか、
について次のに分
けて整理しました。

 




登場人物の造型
には、
次の
()()がある。

()
当時のロシア国内外に
実在した人物をモデル
にしているもの。

(1-1)
ドストエフスキーの身辺
の人物(家族、親族、
親しくした友人知人)

〈例〉
・『罪と罰』
のカチェリーナ、ラズミーヒン
・『カラマーゾフの兄弟』
のフョードル

(1-2)
ドストエフスキーの生涯
のある時期においてド
ストエフスキーと交渉の
あった人物(愛人、師、
知人、仲間)

〈例〉
・『白痴』
のナスターシャ‐フィリポヴナ、
エパンチン家の令嬢たち

(1-3)
.
ドストエフスキーとはあま
り交渉はなかったものの、
当時のロシア国内外で知
られた人物

〈例〉
・『悪霊』
の各登場人物



()
ドストエフスキー自身が
投影されている(大なり
小なりドストエフスキーの
分身である)もの。

〈例〉
・『カラマーゾフの兄弟』
のイヴァン
・『悪霊』
のスタヴローギン
・『罪と罰』
のスビドリガイロフ

 

()
ロシアまたは外国の小
説の登場人物をモ
デルにしているもの。

〈例〉
・『罪と罰』
のスビドリガイロフ
←バルザックの『ゴリオ爺さん』
のヴォートラン?

・『悪霊』
レビャートキン二等大尉
←シェークスピアの戯曲
のフォルスタッフ



()
聖書に出てくる人物を
モデルにしているもの。

〈例〉
・『白痴』
のムイシュキン公爵
・『罪と罰』
のソーニャ、
リザヴェータ、
ラスコーリニコフ



()
ロシアで古来民間信仰
として伝えられている、伝
説的人物や国民的英
雄をモデルにしているもの。

〈例〉
・『カラマーゾフの兄弟』
のアリョーシャ



()
その前に書かれた自分
の小説の登場人物の
形を変えた何らかの継
(継承)として書かれ
ているもの。 

〈例〉
・『罪と罰』
のラスコーリニコフと
『白痴』
のムイシュキン公爵
・『罪と罰』
のソーニャと
『白痴』
のナスターシャ‐フィリポヴナ



()
ドストエフスキーの長年
の人間観察から生まれ
た典型的な人物として描
かれているもの。


〈例〉
・『カラマーゾフの兄弟』
の各人登場人物




ストーリーや内容の造型
には、
次の
()()がある
         
()
ドストエフスキー自身の
身に過去に起こった体
験や出来事や人間関
係を描いているもの


〈例〉
・『罪と罰』
の予審におけるやりとり



()
当時や過去にロシア社
会で起こった事件や流
(はやり)に取材して
描いているもの。

〈例〉
・『悪霊』
のシャートフ殺害



(-)
ロシアの小説・戯曲の
ストーリーや箇所を借
りて描いているもの。

〈例〉
・『罪と罰』
←プーシキン
の『スペードの女王』




(-)
外国の小説・戯曲の
ストーリーや箇所を借
りて描いているもの。

〈例〉
・『罪と罰』
←バルザック
の『ゴリオ爺さん』、
スタンダール
の『パルムの僧院』
・『カラマーゾフの兄弟』
←シェークスピア
の『リア王』、
ユゴー
の『レ・ミゼラブル』




()
聖書に出てくる人物関
係や出来事を借りてい
たり、暗に重ねている
もの。

〈例〉
・『罪と罰』
のソーニャ、
リザヴェータ、
ラスコーリニコフ



(
)
その前に書かれた自分
の小説の続き(形を変
えた何らかの継続)とし
て書かれているもの。

〈例〉
・『罪と罰』と
『地下室の手記』


       

その他、重要と思われる要素
として、次の()()など。

()
ドストエフスキー自身が
与えられる、インスピ
レーションにより作中
の内容を得ている点。

この点についてのドス
トエフスキーの言葉



()
過去のことを描いた歴
史小説でなくて、同時
代のロシア社会や西
欧を舞台とした小説で
あり、当時の欧化を受
けて変動する帝政ロシ
アの社会状況を背景
にして描いている
という点。


()

多くが、ペテルブルグ
という独自の都会を舞
台にしているという点。 


()
ドストエフスキーの独自
の創作過程(創作ノート
の活用、後半生の妻の
協力による口述筆記と
いう形態など)。 


()
掲載する出版社や雑誌
社からの催促や検閲、
知人や当時の有力者
からの働きかけ。


()
当時の作家の大作(トル
ストイの『戦争と平和』
『アンナ・カレーニナ』
など)に対するライバ
ル意識。   


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