『カラマーゾフの兄弟』
の邦訳一覧
(更新:24/05/21)
『カラマーゾフの兄弟』
のこれまでの邦訳として、
以下、15人の訳者
による訳(A)〜(G)がある。
★は、現在市販中のもの。
★はおすすめのぶん。
現在も文庫本として市販
されていて、身近に入手で
きる知られた訳
としては、
以下の三つのテキスト
があり。
(A)
米川正夫訳
『カラマーゾフの兄弟』★
a.『梗概カラマゾフの兄弟』
(1914年刊)
b新潮社「ドストエーフスキ
ー全集」のぶん
(1917年刊)
c旧版の岩波文庫のぶん
(1927年〜28年初版)
d現行の岩波文庫のぶん
(1957年、2003年・
2004年改版)★
e河出書房のカラー版
世界文学全集の巻17
(一巻本・1968年刊)
f.河出書房新社の愛蔵版ドス
トエフスキー全集の
巻12・13(1969年刊)
g.古典教養文庫のぶん
(2017年初版のKindle版。
dをもとにしている。)
原卓也訳
『カラマーゾフの兄弟』★
新潮文庫のぶん
(全3冊、1978年初版、
2004年改訂版)★
=新潮社刊決定版ドストエフス
キー全集の巻15・16
(1978年刊)、
新潮世界文学巻15のぶん
(一巻本・1971年初版)★
亀山郁夫訳
『カラマーゾフの兄弟』★
光文社古典新訳文庫・全5巻
〔巻1・2006年9月初版、巻2・2006年11月初版、巻3・2007年2月初版、巻4・5・2007年7月初版〕)★
岩波文庫の分(米川正夫訳)は、文語調・漢語の箇所があり、そういった文体に慣れていない読者は読むのに苦労するかもしれない。そのぶん、訳文には格調はある。各登場人物にふさわしい話体にしている。テキストは、活字がやや薄くて、そのぶん、やや読みにくい。
新潮文庫の分(原卓也訳)は、平易な口語訳を心掛けていて、すらすらと読みやすい。割注が多く付されている。
光文社古典新訳文庫の分(亀山郁夫訳)は、新訳として、平易な口語訳を心掛けていて、すらすらと読みやすい。割注はなし。
上記の三つのテキスト以外にも、
最寄りの図書館や古書店で
入手できるなら、以下の、
小沼訳、江川訳、池田訳
も、手慣れた労訳・名訳
として、おすすめ。
近年刊行されたもの
としては、次のテキストがあり。
(B)
杉里直人訳
『詳註版 カラマーゾフの兄弟』★
水声社2020年2月刊。★
※、欧米の最新の研究成果や註を踏まえての『カラマーゾフの兄弟』の新訳。
現在では品切れ・絶版のもの
としては、以下のテキストがあり。
(C)
小沼文彦訳
『カラマーゾフ兄弟』★
筑摩書房の
世界文学大系の巻39・40、
筑摩書房刊ドストエフスキー全集
の巻10・11(1963年刊)
筑摩書房刊の
hikumaclassicsのぶん
(1978年初版)。
※、各章末に語注が付いている。
江川卓訳
『カラマーゾフの兄弟』★
集英社の愛蔵版世界文学全集
の巻19(一巻本・1975年刊)、
集英社の世界文学全集「ベラー
ジュ」の巻45・46
(1979年刊)。
※、巻末に語注が比較的多く付いている。本文の活字が比較的大きい。
池田健太郎訳
『カラマゾフの兄弟』
中央公論社の「世界の文学」
の巻17・18(1966年初版)、
中央公論社文庫のぶん
(全5冊、1978年初版)
(D)
北垣信行訳
『カラマーゾフ兄弟』
講談社文庫のぶん
(全3冊、1972年初版)、
講談社の世界文学全集の
巻45・46(1975年初版)
中山省三郎訳
『カラマゾフの兄弟』
三笠書房刊「ドストイエ
フスキイ全集」の中の
『カラマゾフ兄弟』
(1936年刊)、
角川文庫のぶん
(全5冊1953〜54年初版、
全3冊1968年改訂版)、
研秀社の
世界文学全集の巻8、
2013年3月ゴマブック
ス刊(kindle版)。
※、中山省三郎氏は、ロシア文学者・翻訳家・詩人。1904〜1947。
箕浦達二訳
『カラマーゾフの兄弟』
旺文社文庫のぶん
(全4冊のうち、これまで
第1冊・第2冊
を刊行(1974年刊)。
※、旺文社文庫がそののち廃刊になったことから、第3冊以降の刊行は中絶。
※、箕浦氏とはお知り合いというボードへの来訪者のあさださんの話によれば、残念ながら、箕浦氏には第3・4冊を刊行する予定は今もないそうです。
(E)
原久一郎訳
『カラマアゾフの兄弟』
現行の新潮文庫の原卓也訳
の前身になる新潮文庫のぶん
(全5冊、1961年初版)
※、原久一郎氏は、原卓也氏の御父。上記の原卓也氏の訳は、父の訳業を受け継いでの訳。
(F)
米川和夫訳
『カラマーゾフの兄弟』
世界文学全集「デュエット版」
の巻28・29。
1968年〜1971年刊。
※、米川和夫氏は米川正夫氏の御子息。
(G)
広津和郎訳
『カラマゾフ家の兄弟』
冬夏社刊『ドストイェーフスキー全集』の巻7・8(1920年刊)、
春秋社刊『ドストイェフスキイ全集』
の巻11・12(1924年刊)
※、広津和郎氏は、作家・評論家。1891〜1968。
三浦関造訳
『カラマゾフの兄弟』
1914年刊。
※、日本での『カラマーゾフの兄弟』
の最初の完訳は、この三浦関造訳のぶんになるが、ロシア語からの直接訳は、1917年(大正6年)刊の新潮社「ドストエーフスキー全集」の米川正夫訳のぶんとなる。
※、詩人の萩原朔太郎は、この三浦訳の分で『カラマーゾフの兄弟』を読み、ドストエフスキーに開眼。
※、三浦関造氏については未詳。
森田草平訳
『カラマゾフ兄弟』
1915年刊。
※、森田草平氏(1881〜1949)は夏目漱石のお弟子さんだった作家。小説として『煤煙』など。漱石にドストエフスキーの作品を読むことをすすめた。
ほかに、
抄訳として、
『ミステリー・カット版
カラマーゾフの兄弟』
(頭木弘樹著。春秋
社2019年初版。)
縮訳として、
・『カラマーゾフの兄弟』
(米川正夫・鎌原正
巳・縮約。金の星
社「ジュニア版世界
の文学」の巻17。
1966年初版。)
・『カラマーゾフの兄弟』
(江川卓・縮約。集英社
版コンパクト・ブッ
クス「世界の名作」巻
12。1964年初版。)
・『カラマーゾフの兄弟』
(蒲生芳郎・縮約。
みちのく書房
1998年刊。)
がある。
主な邦訳の問題箇所など
を指摘し、論じたものとして、
『「カラマーゾフ兄弟」の翻訳
をめぐって』
(大島一矩著。光陽
版社2008年初版。)
があり。
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