近現代の俳句 
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更新:24/11/29)
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近現代の名句「BEST 50」・選

近現代の主な俳人・一覧
(更新:24/11/29)




近現代の名句「BEST 50」・選

自分は中学時代以降、俳句に親しんできましたが、当コーナーは、明治以降現代までに詠まれた俳句の中から、私の好みも含めて、名句(佳句・秀句)と思う句を選び、そのBEST 50を定めていくコーナーです。
今後、随時、新たな選出・順位を更新していく予定。
1、2〜はBEST 50の順位。
はあまり知られていないマイナーな句。〔  〕は作者。※〜、※※〜は語注や解説。



まさをなる/空よりしだれ/ざくらかな
〔富安風生〕

・まさをなる=真っ青な。
・しだれざくら=桜の一種で、花をつける枝がしだれている。



方丈の/大庇より/春の蝶
〔高野素十〕

・方丈(ほうじょう)=お寺の住職の居室。この句の場合、京都の龍安寺(りょうあんじ)のこと。
・大庇(おおびさし)=当寺院の大きな庇(出入口や窓の上に独立して取り付けられた小さな屋根)



くろがねの/秋の風鈴/鳴りにけり

〔飯田蛇笏〕

・くろがねの=鉄製の。
・秋の風鈴=秋になっても取り残されていた風鈴。
・鳴りにけり=鳴ったことよ。



をりとりて/はらりとおもき/すすきかな
〔飯田蛇笏〕

・をりとりて(おりとりて)=手折(たお)って手に受け取ると。



したたかに/水をうちたる/夕ざくら

〔久保田 万太郎〕

・したたかに=力強く。ぴしっと。 
・水をうちたる=家の表に出て桶を持ち柄杓(ひしゃく)で打ち水をした。
・夕ざくら=この夕刻、まわりにある桜木のこと。



分け入つても/分け入つても/青い山
〔種田 山頭火〕

熊本県の馬見原から高千穂の三田井への道中において詠まれたもの。



ぜんまいの/のの字ばかりの/寂光土
〔川端茅舎〕


・のの字ばかりの=「の」の字ばかりがある。
・寂光土(じゃっこうど)=仏の悟りである真理そのものが具現している世界。



鮟鱇(あんこう)/骨まで凍()てて/ぶちきらる
〔加藤楸邨〕

・ぶちきらる=ぶらさげられて大鉈(おおなた)で荒っぽく切られることよ。



滝落ちて/群青世界/とどろけり
〔水原 秋桜子〕

・滝落ちて=滝の水が落下して。
・群青世界(ぐんじょうせかい)=まわりの新緑やそれを映す滝つぼの群青色の世界。
・群青世界とどろけり=まわりの群青世界へと響きわたることよ。


10
万緑や/死は一弾を/以て足る
〔上田 五千石〕

・万緑(ばんりょく)=まわりにあふれる夏のムンムンとした新緑。
・死は一弾を以(もっ)て足()る=ピストルの一発の弾(たま)をこめかみに撃ち込むだけで死は訪れる。
※、夏のあふれる新緑にかこまれて、今死んでも生の断絶などありえないと思えるほどの生々しい充溢(じゅういつ)した生の感覚を作者は覚えたのであろう。


11
戸にも出よ/触るるばかりの/春の月
〔中村汀女〕

・戸()にも出()よ=外に出てみなさい。
・触()るるばかりの=明るくて大きくて、手に触れることができると思われるほどの。
・春の月=春の朧月(おぼろづき)


12
鉄鉢の/中へも/(あられ)
〔種田 山頭火〕

・鉄鉢(てっぱつ)=托鉢僧が施しを受けるための鉄製の鉢。


13
物種を/にぎれば生命/ひしめける
〔日野草城〕

・物種(ものだね)=野菜草木などの種(たね)のこと。
・生命(いのち)ひしめける=生命がひしめくことよ。


14
秋の航/一大紺円/盤の中
〔中村 草田男〕

・航(こう)=船での航海。
・一大紺円盤(いちだいこんえんばん)の中=とてつもなく広い(海の)紺色の円盤(のような大海原)の中(を船は進むことよ)


15
春暁や/人こそ知らね/樹々(きぎ)の雨
〔日野草城〕

・春暁(しゅんぎょう)=春の明け方。
・人こそ知らね=人々はまだ眠りについていてこの様子を知らないが。〔〕返り結びの文型になっている。


16
冬菊の/まとふはおのが/ひかりのみ
〔水原 秋桜子〕

・まとふ=身にまとう。
・おのが=自分の。


17
(こだま)して/山ほととぎす/ほしいまゝ
〔杉田久女〕

・ほしいまゝ(ほしいまま)=自分の気ままに鳴くさま。

 
18
生き堪えて/身に沁()むばかり/(あい)浴衣
〔橋本 多佳子〕

・生き堪()えて=我慢強く生き長らえて。


19
冬の日や/臥して見あぐる/琴の丈(たけ)
〔野沢節子〕

・臥()して=病気で布団に寝て。
・見あぐる=見上げる。


20

月一輪/凍湖一輪/光りあふ
〔橋本 多佳子〕

・月一輪凍湖一輪=冬の夜空の満月と地上の氷結した湖を一輪の花に喩えたもの。
・光りあふ(ひかりあう)=光り合っている。


21
雨後の蝶/まことに白く/とびにけり

〔星野立子〕

・とびにけり=飛んだことよ。


22
冬の水/一枝の影も/欺かず
〔中村 草田男〕

・影=姿。
・欺(あざむ)かず=そのままくっきり映していることよ。


23
うすうすと/窓に日のさす/五月かな

〔正岡子規〕
※  
・うすうすと=光などが薄いさま。うっすらと。


24
菊人形/たましひのなき/匂かな
〔渡辺水巴〕

・菊人形=菊で飾った等身大の人形。
・たましひのなき匂(におい)=魂を持たないものの匂い。



25
プラタナス/夜もみどりなる/夏は来ぬ
〔石田波郷〕

・プラタナス=常緑の街路樹。
・来()ぬ=来たことよ。


26
ピストルが/プールの硬き/()にひびき
〔山口誓子〕


・ひびき=響くことよ。連用形止めの用法。


27
金亀子(こがねむし)/擲つ闇の/深さかな
〔高浜虚子〕

・擲(なげう)つ=強く投げ付ける。


28
高々と/蝶こゆる谷の/深さかな 
〔原 石鼎〕

・こゆる=越える。


29
まろび寝の/小さき母や/夜の秋 
〔福田寥汀〕

・まろび寝=丸くなって寝ているさま。
・夜の秋=夏も終わりの頃の、なんとなく秋めいた感じのする夜。


30
バスを待ち/大路(おおじ)の春を/うたがはず
〔石田波郷〕

・大路(おおじ)=都会の大通り。


31
こしかた/ゆくすゑ/雪あかりする
〔種田 山頭火〕

・こしかたゆくすゑ(ゆくすえ)=これまでの過去と今後の未来。


32
おそるべき/君等の乳房/夏来(きた)
〔西東三鬼〕


33
手鞠唄/かなしきことを/うつくしく
〔高浜虚子〕

・手鞠唄(てまりうた)=子供たちが手鞠をつきながら歌う地方の童謡のこと。
・かなしきことをうつくしく=哀しい内容を美しい声で歌うことよ。


34
芋の露/連山影を/正しうす
〔飯田蛇笏〕

・芋(いも)の露=眼前の芋畑の葉に生じている朝露。
・影を正(ただ)しうす=連山はその姿をくっきりと見せることよ。


35
立冬の/ことに草木の/かがやける
〔沢木欣一〕

・ことに=とりわけ。
・かがやける=輝いていることよ。


36
コスモスの/よく動きゐる/花の数
〔高浜虚子〕

・動きゐる(いる)=動いていることよ。連体形止めの用法。



37
冬波の/人遠ざける/青さかな
〔黛 まどか〕

・人遠ざける=人(作者)を遠ざける。


38
来て愕く/軍港の冬/あたたかき
〔山口誓子〕

・愕(おどろ)く=非常に驚いたことよ。終止形止めの用法。
・あたたかき=予想外に暖かかったことよ。連体形止めの用法。


39
やはらかき/母にぶつかる/蚊帳の中
〔今井 聖〕
※※

母は寝かせようとするがすぐには寝ずに蚊帳(かや)の中で兄弟たちとはしゃいだ作者の幼児の思い出を詠んでいる。


40
摩天楼/より新緑が/パセリほど
〔鷹羽狩行〕

・パセリほど=食皿におけるパセリほど見えることよ。


41
蟇歩く/到りつく辺の/ある如(ごと) 
〔中村汀女〕

・蟇(がま)=ガマガエル。
・到りつく辺(へん)=至って着く場所。


42
自転車泥棒/逃げても逃げきれぬ/大夕焼
〔磯貝 碧諦館〕


43
暗く暑く/大群衆と/花火待つ  
〔西東三鬼〕


44
みちのくの/月のつめたく/夏簾(すだれ)
〔柴田 白葉女〕

・みちのく=奥州。東北地方。


45
白菜(はくさい)/かがやく量を/もてあます
〔文挟 夫佐恵〕


46
ところてん/煙の如(ごと)/沈み居り
〔日野草城〕

・沈み居り(しずみおり)=桶(おけ)の底に沈んでいたことよ。終止形止めの用法。


47
木枯や/目刺しにのこる/海のいろ
〔芥川 龍之介〕

・目刺し(めざし)=外は木枯(こがらし)が吹く自宅の食卓に上がった魚の目刺しのこと。


48
今立てる/一白波や/秋の海   
〔京極杞陽〕
※       
・今立てる=今立った



49
想念の/絶壁の如し/鉦叩
〔川端茅舎〕

・想念の絶壁の如(ごと)し=もうこれ以上進めないところまで考えが至ったさま。
・鉦叩(かねたたき)=庭の草むらで鳴く虫の名。不意に鳴き始めたその鳴き声で我に返ったということ。


50
初冬の/竹緑なり/詩仙堂 
〔内藤鳴雪〕

・緑なり=青々としているよ。終止形止めの用法。
・詩仙堂=京都市左京区一乗寺にある石川丈山の隠棲所。1641年落成。




近現代の主な俳人・一覧
(
更新:24/11/29)

赤字は、近現代日本
の代表的なリーダ
ー格だった俳人。
青字は、その他の俳人
で、特に注目したい俳人。
時代別、グループ別、作風
別に分けて挙げています。
各右の( )は、上掲の
BEST50」で挙げているそ
の作者の句の順位番号
です。



正岡子規( 23 )
高浜虚子( 27 33 36 )
河東碧悟桐

内藤鳴雪( 50 )
松根東洋城、
石井露月、佐藤紅緑、
青木月斗、坂本四方太

荻原井泉水、中塚一碧楼、
大須賀乙字

種田山頭火( 6 12 31 )
尾崎放哉

橋本夢道、栗林一石路

芥川龍之介( 47 )

夏目漱石、
久米正雄、内田百鬼園、
寺田寅彦

尾崎紅葉、室生犀星、
瀧井孝作、永井龍男、
久保田万太郎( 5 )
木下有爾

飯田蛇笏( 3 4 34 )
日野草城( 13 15 46 )
川端茅舎( 7 49 )
渡辺水巴( 28 )原石鼎、
村上鬼城、
前田普羅( 24 )
京極杞陽( 48 )阿波野青畝

臼田亜浪、山口青邨、
石原八束、西島麦南、
福田蓼汀、松瀬青々( 29 )
野見山朱鳥、
波多野爽波、
文挟夫佐恵( 45 )
   
山口誓子( 26 38 )
水原秋桜子( 9 16 )
高野素十( 2 )

西東三鬼( 32 43 )
吉岡禅寺洞、
高屋窓秋、渡辺白泉
篠原鳳作、石橋辰之助、
島田青峰、有働亨、
斎藤玄、橋關ホ


飯田龍太、高浜年尾、

秋元不死男古沢太穂
山口草堂、中島斌雄、
松村蒼石、長谷川双魚、
中川宋淵

平畑静塔富沢赤黄男
能村登四郎、原子公平、
篠原梵、鈴木六林男、

榎本冬一郎、飴山実、
下村槐太


石田波郷( 25 30 )
中村草田男( 14 22 )
加藤楸邨( 8 )
松本たかし、大野林火

富安風生( 1 )横山白虹、
芝不器男石塚友二

永田耕衣、河原枇杷男、
高島筍雄、夏石番矢、
攝津幸彦、
田中裕明、
赤尾兜子

杉田久女( 17 )
星野立子
( 21 )
本田あふひ、阿部みどり、
長谷川かな女

中村汀女( 11 41 )
橋本多佳子( 18 20 )
三橋鷹女、鷲谷七菜子、
柴田白葉女( 44 )
山口波津女、赤城さかえ、
加藤知世子

野沢節子( 19 )桂信子
細見綾子稲畑汀子
小坂順子、津田清子、

宇多喜代子、黒田杏子、
鍵和田秞子、寺井谷子、
永末恵子、片山由美子

鷹羽狩行( 40 )
上田五千石( 10 )、   
沢木欣一( 35 )、川崎展宏、
平井照敏、坪内稔典、
仁平勝

加藤郁乎、安東次男、
寺山修司、高橋睦郎、
角川源義、角川春樹

金子兜太高柳重信、
森澄雄
、楠本憲吉

石川桂郎、伊丹三樹彦
藤田湘子、加倉井秋を、
磯貝碧諦館( 42 )、佐藤鬼房、
村越化石、安住敦、
倉田紘文、永田耕一郎

中原道夫、斎藤慎爾、
阿部完市、大峯あきら、
草間時彦、三橋敏雄、
大串章、能村研三、
森田峠、深見けん二

宇佐美魚目、田村奎三、
伊藤道明、矢島渚男、
脇村禎徳、宮津昭彦、
友岡子郷、岡田日朗、
大井雅人、吉田汀史、
福田甲子雄、有馬朗人、
山上樹実雄、辻田克巳、
斎藤夏風


棚山波朗、大槻一郎、
宮坂静生、大嶽青児、

原裕、西川徹郎、
安井浩司、高野ムツオ、
林桂、石寒太、
茨木和生、廣瀬直人

岡本眸、大木あまり、
石田響子、山本洋子、
池田澄子、津沢マサ子、
正木ゆう子、鎌倉佐弓、
高澤晶子、嶋戸奈菜、
渡辺純枝、夏井いつき


金子青銅、岡本高明、
大屋達治、岩井英雅、
今井聖( 39 )、千葉皓史
 
長谷川櫂、小澤實、

大内史現、中田剛、
日原傳、上野一孝、
四ッ谷龍、住宅顕信、
岸本尚毅、中岡毅雄、
五島高資

櫂未知子、松本恭子、
黛まどか( 37 )大高翔




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