ドストエフスキーのロシア語原文
の特徴のこと
(1〜10)
投稿者:
mir、Seigo、
z-xy
(1)
[1006]
ドストエフスキーのロシア語原文
の特徴のこと
名前: Seigo
投稿日時:12/12/02(日)
ドストエフスキーの小説のロシア語原文に関して、その文体の特徴、等の情報・意見交換を願う。
* * *
・ドストエフスキーの小説の文体
についての
中村 健之介氏の指摘( 1 )
・『罪と罰』の原文の文体や作為
についての
江川 卓氏の指摘( 1 )
( 以上は、ページ内に
掲載済みのぶん )
(2)
[1007]
RE:ドストエフスキーのロシア語原文
の特徴のこと
名前:mir
投稿日時:12/12/02(日)
中村健之介氏の述べておられる通りの印象を私も持っています。たたみかけるように言葉を重ねて心の奥底を
分析し尽くそうとしているかのようです。画家が同じ個所を一筆一筆色を微妙に変えながら対象の本質を描き切ろうとするように。ドストエフスキー自身が言葉 を探しているもどかしささえ伝わって来る時があります。
(3)
[1010]
RE:ドストエフスキーのロシア語原文
の特徴のこと
名前:Seigo
投稿日時:12/12/09(日)
mirさん、
原文『カラマーゾフの兄弟』の文体についての早速の投稿、どうも。なるほどな、と思います。
他にも、気付きがあれば、今後、いつでも、投稿、どうぞ。
(4)
[1018]
RE:ドストエフスキーのロシア語原文
の特徴のこと
名前:mir
投稿日時:13/01/16(水)
彼の作品には自然描写が少ないと思いますが、登場人物の心象と融け合うような実に美しい箇所があります。たとえば「カラマーゾフの兄弟」で、アリョーシャが大地に接吻し精神的な変容を遂げる夜の場面です。
拙訳ですが ― …静かに輝く星に満ちた夜空が果てしなく広がって彼の頭上を覆っている。まだおぼろげな天の川が天頂から地平まで二筋に分かれている。清々しい静かな夜が
凍りついたように大地を包み、聖堂の白い塔や金色の丸屋根がサファイヤのような空に輝いていた…花壇には秋の麗しい花々が朝までの眠りに就いている。地上 の静寂が天上の静寂と融け合うように、大地の神秘が星の神秘と触れ合っていた・・・彼は泣きながら大地に接吻して、慟哭しながらその涙で地を濡らし、大地
を愛する事を、永遠に愛する事を夢中で誓い続けた。“ お前の歓びの涙で大地を濡らし、そのお前の涙を愛せよ・・・” 心にこの言葉が高らかに響きわたっていた。
このように、情景がそのまま彼の精神の状態を形容するかのように言葉が選ばれています。
(5)
[1020]
RE:ドストエフスキーのロシア語原文
の特徴のこと
名前:mir
投稿日時:13/01/21(月)
「カラマーゾフの兄弟」の中で何度か“
パドレェーツ ” という語に出会います。“ 卑劣漢 ”、“ 卑怯者 ” の意です。イワンやドミートリィが自分の振舞いが良心に恥じるものとして自身を責める場面で発しています。宗教的なニュアンスはなく、道義的な語感があり
ます。また “ 侮辱する・される ” の語も大きな意味を持って人物を動かします。これらの感情は時代や洋の東西を問いませんが、作品を通して伝わる作者の人間観です。
(6)
[1123]
RE:ドストエフスキーのロシア語原文
の特徴のこと
名前:mir
投稿日時:16/01/02(土)
カラマーゾフの兄弟の中で、イリューシャが犬にピンの入ったパンを与えた事に対してコーリャが絶交を伝えた気持を語る次の場面があります。原文は
Тайна в том, что я хотел его выдержать на фербанте
всего только несколько дней, а там,видя
раскаяние, опять протянуть ему руку.
(試訳:僕はあの子をせいぜい数日間突き放しておいて、そこで後悔するのを見た上でまたあの子に手を差し伸べたいと内心密かに思っていたんですよ)
この文中の “ фербант ” が辞書になく訳に手間取りました。何とか調べたところ、ドイツ語由来で、追放・流刑・禁止等の意味です。ロシア語で同じ意味の語がいくつかあるのに、なぜ
あえてこの語を使ったのか疑問です。用例としてこの作品のこの部分が出ていましたから、使われる頻度は少ないと考えられます。
知人のロシア人にこの点を質問したところ、“ Dostoevskyは言葉をかなり勝手に使う特徴があり(これについて研究もあるらしい)выдержать
на фербантеは、「距離を置く」ということで、普段では使わない ” との答えでした。“ 突き放しておいて ” の訳でいいのだと思います。他にも、今は使われていない語彙が結構出てきます。
あらためて、百数十年前の作品である事を感じますが、内容は現代に生きています。
(7)
[1124]
RE:ドストエフスキーのロシア語原文
の特徴のこと
名前:z-xy
投稿日時:16/01/10(日)
明けましておめでとうございます。
[1018]は、こころが、洗われるように、きれいですね。
刺激を補填しないと、勉学よりも、自由な気分、自由チャージに、満足感を人生している、やや、危険な遊びっぷりです〜。
お酒アルコールが怠惰というか、体力造りに励むベクトルあるなぁーっと、
お酒アルコールを、絶つ宣言。
一日の仕事量が5倍は増えて充実しそうな気配の、年初の気持と期待と抱負ですね。
ということは、ドストエフスキー氏よりも、周囲の読書に行きがちな昨年の後半でしたね。
体力造りとは、具体例では、旅行等。
イスラム文化もちっちゃな教会が、日本にあるようなちっちゃな教会があるという庶民的な光景、つまり、がんじがらめではない、柔らかい宗教体質というものを、体験して、ホッと致しました。
イスラム教の国といっても、国民自体は、柔らかい宗教的気持を持っているなあという様な事実を、示していて、過激な思考は、別次元の問題にとらえる。
ということでしょうね。
本に囲まれる生活を、今年も目指したいと考えています。
「真実」を、360度の方向で、5次元空間で、追求するのが、趣味なのかもしれませんね。
(8)
[1125]
RE:ドストエフスキーのロシア語原文
の特徴のこと
名前:mir
投稿日時:16/01/12(火)
[1124]z-xy氏の“ 柔らかい宗教的気持 ” に関連して思うところがありました。先日観た「裁かれるは善人のみ」(原題リバイアサン)で、ロシア人が神が問題をいかに深く意識しているかを感じまし
た。強権、欺瞞に対し為す術のない不幸な弱者はヨブのように神の沈黙を問うのみです。ドストエフスキーが作品で提起し続けた事が、今なお現実のロシアで進 行形なのです。柔らかいとは言えず、かなり鋭いものに思われました。
“ Левиафан ” と原題通りにして欲しかったのですが。
(9)
[1126]
名前:mir
投稿日時:16/01/13(水)
“ 真実の5次元空間での追及 ” 興味深いです。
(10)
[1160]
RE:ドストエフスキーのロシア語原文
の特徴のこと
名前:mir
投稿日時:16/05/01(日)
「カラマーゾフの兄弟」の一場面。イリューシャを診察したモスクワの名医が、手の施しようがない事を尊大
に父親に告げ、コーリャが憤慨します。通常 “ 医師 ” は “доктор” (ドクトル) が使われますが、そこでコーリャが呼びかけに使ったのは “ лекарь ” (レカーリ)です。辞書に帝政時代の医師の正式名称とあり、同時に
“ やぶ医者・へぼ医者 ” の意味も載っています。ただでさえ以前から医術の無力に批判的なコーリャが、精いっぱい皮肉を込めたわけです。作者は時折、現在では廃れている語を使っていてます。手持ちの辞書にない単語を検索してみて、作品の当該部分が用例として出てくる事もあります。
彼の時代である帝政ロシアから革命を経てソ連邦へ、さらに現代ロシアへと社会が変遷すると共にロシア語の語彙も変わってきているのです。どの言語にも言える事でしょうが。
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